
インタビュー
大手エンタメコンテンツ制作会社での社内弁護士を経験
これまでのキャリアについて教えてください。
2015年に弁護士となり、東京都内の法律事務所に所属した後、2016年から約2年間、大手エンタメコンテンツ制作会社である株式会社Cygamesの社内弁護士として勤務しました。
2018年に当事務所の前身となる法律事務所を設立し、現在、弁護士法人LEONの代表を務めています。当事務所には、現在10名の弁護士が所属しており、東京だけでなく大阪にも事務所を構えています。
社内弁護士になったのはどういった理由だったのでしょうか。
幼い頃からゲームやマンガなどのエンタメが大好きで、弁護士になったらエンタメに関わる仕事をすると決めていました。弁護士になって一旦は法律事務所に就職したものの、より深くエンタメに関わる仕事がしたいと思い社内弁護士になりました。
どういったことを事務所理念にされていますか。
誠実さ、解決力、スピードを理念としています。
誠実さというのは、1つの方法で諦めるのではなく、他の方法を考えて提案したり、できる限りの手を尽くすということです。「依頼者に対して絶対に嘘をつかない」ということも大切にしています。
解決力というのは、依頼者の要望を叶えるために様々な問題を解決すること、わかりやすく言うと、法律的に正しい形でサービスやプロダクトを世に出せるようにすることです。
スピード感については、依頼された仕事を素早く仕上げること、そして納期を必ず守ることを大切にしています。弁護士の仕事が遅かったり納期を守らなかったりすると、プロジェクト自体が滞ってしまいますから、そういったことは避けなければなりません。
法律的に正しい形で世に出せるように、一からサポートします
企業法務の分野に注力している理由を教えてください。
企業法務といっても幅広いですが、特にエンタメ分野に注力しているのは、やはり私がエンタメコンテンツやWebサービスが好きなので、非常にやりがいを持って仕事ができるからです。
日本は元々アニメやマンガなど世界に誇れるコンテンツがあります。今は海外のエンタメも勢いがあるので、日本のエンタメがもっともっと世界で楽しんでもらえるようにサポートしたいですね。アジア、欧米、ヨーロッパなどへの海外展開も対応できますので、英文契約書を使用した外国企業とのやり取りなどもお任せください。
企業からは、どのような相談が多いですか。
ゲーム、アニメ、映画、音楽、芸能を始めとしたエンタメに関する相談が最も多く、相談全体の7割くらいでしょうか。特に多いのは、「こういうサービスを始めたいけれど、法的に可能なのか知りたい」「リリースに向けて、法的にどういうことが必要なのか知りたい」といったご相談です。
他にも、M&A、契約書の作成・チェック、開発過程でのトラブル、権利処理など、エンタメに関するありとあらゆることをご相談いただいています。
YouTuber・VTuber・芸能人が所属する事務所の顧問も務めているので、ネット上の誹謗中傷対応などもよくご相談いただきます。人事労務の相談も一定数あり、問題社員の対応だったり、メンタルを崩してしまった社員への対応といった相談もあります。
最近の相談の特徴や傾向はありますか。
最近は、開発紛争が増えてきたように思います。たとえばキャラクター制作やゲーム開発を外注した場合に、発注者が求めるクオリティに達しないとか、期限に遅れるとか、発注者・受注者間で「どこまでやるか」という理解にずれがあったりするなど、様々なトラブルが発生します。ビジネスへの影響を最小限に抑えるために、なるべく早期に紛争を解決できるようサポートしています。
エンタメと法律というのは、どのように関連するのでしょうか。
たとえばゲームは、キャラクターデザインやBGMなど、多くの知的財産が絡みます。オンラインゲームだと、課金システムの仕組みを構築する際、資金決済法、特定商取引法、消費者保護法など、注意しなければならない法律が多数あります。また、利用規約、プライバシーポリシー、資金決済法上の表示、特定商取引法上の表示など、企業を守るために様々な法的文章を作成する必要もあります。
映像制作では、監督、出演者(俳優、エキストラ、声優、ミュージシャンなど)、制作会社、配給会社など、様々な当事者の権利処理が必要です。
想像以上に色んな法律が絡むと知って驚きました。エンタメと聞くと、楽しさ・面白さを追求すれば良いものと思っていました。
もちろん楽しいコンテンツ、面白いコンテンツを作ることは必須です。ただ大前提として、法律に違反していればリリースできませんし、リリース後に法律違反が判明すれば、最悪の場合サービス終了もありえます。せっかく良いアイディアが生まれたのに、法律を知らないばかりにうまくいかないのは非常にもったいないです。だからこそ、弁護士の力を借りて、きちんと正しい形で世に出して欲しいと思っています。
エンタメ業界にも、弁護士のサポートが必須なのですね。エンタメに関する法務は、一般的な法律事務所でも対応できるのでしょうか。
離婚や交通事故といった分野であれば、基本的にはどの法律事務所でも取り扱っています。しかしエンタメに関しては、弁護士の中ではニッチかつ専門性の高い分野なので、扱っている法律事務所は限られます。
特に当事務所は、社内弁護士として現場経験を積んだ弁護士が私を含め複数所属していますし、エンタメコンテンツに関する法務を一通り経験しているという点は非常に大きな強みです。Webサービスやアプリを作りたい場合、当事務所にご依頼いただければ一通り対応できます。
社内弁護士として勤務した経験は、どのような強みになっていますか。
どういう人が開発に関わっているのか、どういう流れで企画や開発が進んでいくのか、どういう取引慣行があるのかなど、外部からわかりにくいことも含めて理解しているところです。業界の専門用語や有名タイトルも把握しており、私自身がエンタメコンテンツが大好きなので、クライアントからは「話が早い」と評価していただくことが多いです。
企業にとって、どのような存在でありたいとお考えですか。
社内の法務部のような感覚で何でも気軽にご相談いただいて、一緒に面白いエンタメを世に出す仲間のような存在でありたいですね。
これまで取り組んできた企業法務案件の中で、印象に残っているものはありますか。
たくさんあるのですが、一つは、これまで世の中になかったサービスをリリースしたいという依頼をいただいたときのことです。法律上曖昧な部分があったので行政庁に問い合わせたところ、後日金融庁から呼び出しがあり、サービスの内容と関連する法律について金融庁でプレゼンしました。その結果、法的に問題ないというお墨付きをいただいて、無事にリリースすることができました。
また、これは現在進行系なのですが、海外のライセンスが絡む問題で、日本以外に韓国、中国、アメリカで裁判をやっている案件があります。非常に大変ではありますが、おそらく印象に残る案件の一つになると思います。
自社の判断が思わぬトラブルを呼び込むことも
弁護士に相談せず、自社で意思決定してしまうリスクは何でしょうか。
企業は、サービスやコンテンツ制作のプロであっても、法律のプロではありません。ですから自社で意思決定することで、法律的に間違った対応をしてしまうリスクが高いです。
そしてトラブルが起きてからだと、解決のために大きなコストがかかってしまう場合が少なくありません。たとえばWebサービスやアプリの開発がある程度進んだ段階で、法律上必要な機能を備えていなかったことが判明したとします。そうなると一部作り直しが必要ですし、その影響でローンチが遅れたり余分な開発コストがかかる場合もあります。また、契約書の作成や権利処理をきちんとしなかったことが原因で、後日裁判に発展するケースも少なくありません。裁判となれば長期間かかりますし、損害賠償しなければならないこともあります。
事業は何かしらのトラブルがつきものですが、法律的な部分は、弁護士に相談すれば予防できることが非常に多いです。保険をかけるようなもので、多少費用がかかっても弁護士に相談するほうが、中長期的に見ると断然メリットがあると思います。
早めに相談するメリットと、相談が遅れることによるデメリットを教えてください。
たとえばサービス開発初期に法的問題が判明すれば、やり直す部分は少なくて済みますし、時間的な余裕もあります。ところが開発終盤にご相談いただいて法的問題が判明すれば、やり直しにかかる時間・労力・費用はかなり大きくなります。
サービス開発は、数年かけて行われることも多いですから、相談が遅れるデメリットはかなり大きいと思います。
企業の内情を理解してもらい、気軽に聞けるのが顧問弁護士の大きなメリット
先生の事務所は、どういった企業の顧問を務めているのでしょうか。
ゲーム、アニメ、芸能、YouTubeなどのエンタメ業界や、ウェブ、アプリ、システム開発などのIT業界の企業を中心に、30社以上の顧問を務めています。社員数は様々ですが、30名から100名前後の企業が多いです。
顧問弁護士を持つことのメリットは何だと思いますか。
内情を把握できるというのは非常に大きなメリットです。何か問題が起きて初めてご相談いただく場合、事業内容、企業風土、キーパーソンなど一からヒヤリングする必要があります。ところが顧問を務める企業であれば、そういったことは全てわかっていますので、最適な解決策をスピーディーに提案できます。
また、できるだけ自社内で対応して、どうしようもなくなってから弁護士に相談する企業もあると思います。しかしトラブルが大きくなってからだと、解決するためのコストが上がってしまいます。他方、顧問契約を結んでいれば、ちょっと気になることがあれば気軽に聞けますので、トラブルを未然に防げるメリットもあります。
さらに、裁判など個別の案件をご依頼いただく場合は別途費用が必要ですが、顧問契約を結んでいる企業であれば、通常よりもリーズナブルにご依頼いただけます。
先生に相談したい場合、どのようにすれば良いでしょうか。
電話・弁護士ドットコムのWebフォーム・当事務所HPからご予約ください。単発でのご相談もお受けしておりますし、顧問契約を検討されているようでしたら、プランや顧問料などについて一度お話する機会を設けさせていただきます。
企業法務について悩み、弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
どういう場合に相談すべきか迷う方もいらっしゃると思いますが、Webサービスやアプリを世に出すのであれば、絶対に弁護士に相談すべきだと考えています。弁護士に相談しようか悩んでいる時間ももったいないので、とりあえず気軽に相談してみてください。