インタビュー
「企業に寄り添ったサービスを提供したい」と独立
事務所設立の経緯を教えてください。
2024年2月に事務所を設立しました。これまでは勤務弁護士として、ジェネラル・コーポレートや特許などの知的財産法務、フランチャイズ関連法務、IT分野を担当してきました。比較的規模の大きな会社からのご依頼をいただくことが多かったです。
今後、より企業に寄り添った形でサービスを提供したい、そして、自分自身もお手伝いしている企業とともに成長しながらサポートをしていきたいと考え、独立して事務所を設立することにしました。
企業法務に注力しようと思われたのはなぜでしょうか。
一つは、クリエイティブな思考が求められる企業法務の分野に面白みを感じているためです。企業分野のご相談は既存の型にはまるものではなく、法整備が追いついていない分野もあります。新たな事業を創造していく中で、法律的な問題をどう解決したらいいのか。そこにクリエイティブな思考が必要となってきます。これは、企業法務特有だと感じています。
二つ目は、色々な企業のサポートをすることで、日本の成長に貢献していきたいためです。法務面から日本の企業をサポートすることで、社会に貢献できたら良いなと考えています。企業法務は面白みと社会貢献という2点から、とてもやりがいがある分野ですね。
企業法務案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
迅速に対応することとわかりやすく説明することを心がけています。法的な知識がなくともきちんと理解していただくことが一番大事ですし、信頼関係につながると思います。
また、弁護士によってスタンスは変わりますが、私自身は法的にダメならダメなりに、何かできないかを考えることを第一にしています。法的にグレーであるなら、どこまでであればOKなのか。他に代替手段はあるのかどうか。企業側としては、できるできないの判断よりも、できるためにどうしたらいいのかという回答を求めています。できる限り希望に沿った形でより良い提案ができるように工夫しています。
顧問先の中にも、「別の先生に頼んでいたけど、できませんとキッパリ断られるだけで困ってしまった」というお話をよく聞きます。違法なことはお勧めしませんが、実現するためにどうしたらいいか一緒に考えていきます。
いつでも気軽に相談できる存在に
企業法務についてよくある相談内容を教えてください。
一般的に契約書の作成とかレビューは多いですが、それ以外ですと「お客様や企業からこのような問い合わせが来たが、どう対処したらいいのか」など企業運営の中で出てくる疑問についてのご相談もあります。
顧問先はベンチャーやスタートアップ企業が多く、法務体制が整っていないところも多いです。法務の外注先として、裁判や紛争だけでなく、日常的にいつでも気軽に相談できる存在になりたいと思っています。
新規事業の際にも、よくお手伝いをさせていただきます。「これからこういうビジネスをやろうとしているが、本当に法的に問題ないかチェックして欲しい」といったご相談です。仕組みづくりから一緒に参加させていただいて、最終的に利用規約や契約書を作成します。
また、フランチャイズ本部(FC本部)の立上げや運営に関する法的サービスも提供しています。業種は飲食や美容など多岐に渡ります。
最近の相談の特徴や傾向はありますか。
IT関係ですと、個人情報やプライバシーポリシーに関するご相談が増えています。フランチャイズ関係ですと、デリバリー関係の業種が多くなってきました。IT関係は、チャットGPTやメタバースなど新しい分野でのご相談も多いです。
知的財産法務は、「こういう商標を使おうとしているが、商標権侵害になっていないか」「これを使おうとしているが著作権侵害にならないかチェックして欲しい」など日常的なご相談がよくあります。
フランチャイズ関係では飲食業も多いですので、対消費者の形で問題が起こりうることもあります。例えば、お客様との取引の中で、会社としてどう対応するのが良いのかどうかの仕組みづくりにも携わっています。
リスクの排除だけでなくリスクの想定をすることが重要
初回の相談ではどのような対応をしているのでしょうか。
基本的には、初回は相談料無料です。その際に企業や相談内容の概要を伺い、私の方でどういったお手伝いができるのか、後日お見積もりをします。
企業法務分野の悩みについて弁護士に相談するメリットを教えてください。
予防法務がすごく大事だと思っています。問題が起こった時に対処することももちろん大事ですが、起こらないようにどうしたらいいのか。問題が起こったとしても、損害を小さくするためにはどうすればいいのか。これらが企業の持続的な発展のために大切なことです。
紛争化すると、時間も費用もかかりますので大変です。事前に契約書を作っておいた方が、安心して動くことができます。実際に訴訟になった際に「こういう契約書の条項があればもっと有利になったのに」という場面に遭遇したこともあります。
弁護士なしで意思決定してしまうことのリスクは何でしょうか。
法的なリスクの排除やリスクの想定ができないことだと思います。
まず、契約書のレビューの中で、リスクを排除することが大事です。一方で、契約というのは相手方がいるものです。どうしても修正できないとか避けられないリスクもあります。そのため、リスクが顕在化しないためにどうしたらいいのか、契約書締結時点で想定しておく必要があります。
ビジネスは、0か100かの世界ではありません。「リスクがあるからやらない、リスクがないからやる」ではなく、そのビジネスをやる時にどのようなリスクがあるのかを踏まえた上での経営判断となります。そこに対して、弁護士として情報提供や法的な側面からアドバイスできることが大きいと思います。
単発ではなく、顧問として継続的に依頼することのメリットを教えてください。
単発でも依頼はお受けしています。単発ですとどうしても契約書レビューなどのご依頼になり、追加で相談したいことが出てきた時には追加で料金をいただく形になります。
顧問としてご依頼いただければ、日常のなかで出てきた疑問点についても、すぐに聞くことができ、不安解消につながるところが大きいと思います。また、継続的にお付き合いすることで、より企業のことを理解した上で対応することができます。
LINEやSlackなどで迅速に相談対応
企業法務分野における先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
一つは、その企業に寄り添って、迅速にご相談に対応するところです。連絡手段はメールだけでなく、LINEやFacebookメッセンジャー、Slack、チャットワークなどでもお受けしています。企業に応じてオーダーメイドでサポートしています。
大きな弁護士事務所になればなるほど、「1週間をめどに回答する」など回答までの基準が決まっていることも多く、意思決定が遅くなることもあります。
私の場合、一人事務所ならではですが、ご相談をお受けして翌日には契約書を作ることもあります。LINEなどを使っていることもあり、夜の時間帯も内容だけでも確認することもできますし、場合によっては夜も対応させていただきます。
これまで取り組んできた企業法務案件の中で、印象に残っているものはありますか。その理由も教えてください。
ある企業のフランチャイズの本部の立ち上げのお手伝いをしました。最終的にフランチャイズ事業がとてもうまくいき、会社の周年祝いに招待いただいた際に、感謝の言葉をいただきました。企業が成長し大きくなった姿を見られることは、とてもやりがいがありますし感慨深いですね。
これまでの知識や経験を踏まえ、その会社にとって何が一番いいのかをご提案したことが、クライアントの満足度につながっていると感じています。
企業法務について弁護士への相談・依頼を検討している方へ向けて、メッセージをお願いします。
「こんな簡単な質問なんだけど、聞いていいのかな」と思ってしまい、弁護士に相談するに至らないケースが多々あります。それだとリスクを見過ごしてしまう恐れがありますので、なんでもご相談いただけるとありがたいです。
これまでベンチャー・中小企業からいわゆる上場企業までお手伝いさせていただいた経験がありますので、企業規模に応じてオーダーメイドの形でサポートします。
そもそも法律的な問題なのか、弁護士に相談すべき内容なのか分からない場合でも大丈夫です。弁護士ではなく、司法書士や弁理士の先生に依頼すべき内容であれば、他の士業の先生にお繋ぎします。何かあったときにちょっと聞いてみようと思ってもらえる「何でも屋」になりたいですね。