インタビュー
依頼者のオフィスに一度は訪問し、現場や社風を確認する
中小企業の企業法務に注力している理由を教えてください。
日本経済(特に地域経済)にとって中小企業がとても重要だと考えております。中小企業がこの先も長期に繁栄し続けるために、中小企業に対する様々なサポートが必要だと考えています。そのため、中小企業特化の法的サポートを中心とした経営のサポートをしたいと思ったからです。
例えば、新規出店や新たな分野への進出はリスクを伴います。このリスクの中身を明確にし、事前に対処しておくことが出来れば、成功の確率は高まり、その企業の繁栄に繋がるのではないでしょうか。私はそのようなお手伝いができるよう、日々中小企業の応援をしております。
また、より長期の視点で見ると経営の次世代へのバトンタッチ(事業承継)は中小企業の重要な経営課題です。大企業と異なり、中小企業の経営者の交代は、その企業の生死に直結する可能性があるからです。事業承継をトラブルのないよう円滑に進めることは、その企業が長期間に渡って繁栄し続けることに不可欠な要素です。
多くの中小企業が長く繁栄し続けることが、日本経済、特に地域経済の未来にとって重要です。そのような思いで企業法務に取り組んでいます。
どの業界からの相談が多いですか。
建設業、水産業、小売業、エネルギー事業、映像制作、スクール事業、化学薬品販売、卸売業、寺院、障害者施設運営、サイバーセキュリティ事業など、幅広い業界からの相談があります。
企業法務案件を手がける上で心がけていることを教えてください。
経営者や現場の目線を大事にすることを心がけています。
そのため、私は、少なくとも一度は顧問先のオフィスなどを訪問するようにしています。
なぜなら、現場を見ないと実際に起こっていることの真の意味を理解できないことがあるからです。もちろん、一度や二度の訪問でその会社のすべてがわかるわけではありませんが、現場の方々の様子やオフィスの雰囲気、業務の進め方など、実際に見るからこそ理解できることがたくさんあります。このようにオフィスなどを訪問するメリットは沢山ありますので、たとえ他の弁護士が行わないとしても私はこれを大切にしています。
現場を見ることによって、契約書の検討や法律問題が発生した場合にも、より実態に即した解決策を提案できると考えています。
###方針転換にも柔軟に対応
どのような相談が寄せられますか。
契約関係の相談が多いです。契約書の作成から、最終的に売掛金を回収するに至るまでの、様々な問題に対応しています。
一応契約書は作成していても、それが簡易なものだったために発生した問題に対応できていないものも見受けられます。例えば、相手方が納期までに商品を納品しなかったり、途中で契約を終了したいと申し出てきたりした場合に、契約書の記載からはどのような対応が出来るのかが判然としないケースなどです。
また、事業承継に関する相談もあります。
事業承継の相談ではどのような対応をしていただけるのでしょうか。
まず、中小企業においては、事業を誰に引き継ぐか(後継者)が決まっていないケースが少なくありません。候補者がまったく思い浮かばない方もいれば、候補者が決まっていても、候補者にそのことを伝えていないため、候補者がそのことを全く知らない場合もあります。そのため、まずは後継者の候補者選びや、候補者に話をするところからお手伝いいたします。
後継者が決まったら、経営と株式をどのように後継者に移転するのかなど、具体的な引き継ぎ方法を検討します。最終的には、後継者に株式を譲渡するなどして、会社の経営権と所有権を移譲しますが、それまでの間やその後、現経営者や後継者がスムーズに経営できるようにサポートしております。
事業承継には時間がかかります。候補者が複数いる場合でも、具体的に検討するうちに適任者が誰もいないことがわかり、選定し直すこともあります。また、経営者自身も、考えを深めていくうちに、当初の考えとは異なる方向に進むこともあります。時間をかけてじっくり考えるべきことなので、私も柔軟に対応しています。
事業承継で弁護士が関わる部分は、一般的には株式譲渡などの法律手続きがメインですが、私はそれとは異なり、その前段階から、候補者選びなどの相談相手として関わっています。悩んでいる方は、ぜひご相談ください。
長年弁護士として活動されている中で、相談内容の変化を感じることはありますか。
私が弁護士になった25年前は、契約書を作成しない業界が少なくなく、契約書がないことで起きるトラブルが多くありました。契約書を作成しないことが普通で、それを不自然に思う人が必ずしも多くはなかった時代です。しかし、現在ではほとんどの業界できちんと契約書を作るようになりました。今の感覚だと、契約書を作成しないなんて信じられないですよね。
当時は、契約の金額という大事な項目ですら、どこにも書かれていないことがよくありました。もちろん、その頃でもきちんとしている企業はありましたが、業界全体として契約書を作る習慣がない業界が存在していました。
私は弁護士として「契約書を作りましょう」という話をよくしていました。これまで契約書を作成していなかった企業でも、契約書がないことで不利な立場に置かれていると感じている企業であれば、弁護士に言われたことを理由として取引相手に契約書の作成を提案しやすくなります。
一方で、契約書を作らない方が有利だと思っている企業は、弁護士に言われたからといってすぐには作りません。しかし、私の周りでは、有利不利に関係なく契約書を作った方が良い、業界全体としてもトラブルが減るのは良いことだと考える経営者が多かったため、契約書を作成するようになっていきました。
弁護士に相談することで、希望に沿った結果を得やすくなる
企業法務で弁護士に相談するメリットを教えてください。
自社内で判断して進めてしまうと、誤った判断をする可能性があります。間違いを避けるためには、弁護士に相談することも大切です。法的な問題でないとしても、弁護士に相談することで、論理的な伝え方や事の運び方についてアドバイスすることが出来ますので、希望に沿った結果を得やすい方法を提案してもらえます。そのような理由から、私は法的な問題でないとしても相談を受けるようにしております。
弁護士以外にも、例えば司法書士や税理士といった専門家がいますが、司法書士や税理士は登記や税務といった特定の分野の専門家です。一方、弁護士は幅広い分野に対応できる知識を持ち、総合的なアプローチが可能です。幅広い視点から多角的に問題を検討し、最適な解決方法を見つけることができるのが、弁護士に相談するメリットです。
弁護士と顧問契約を結ぶメリットは何ですか。
顧問先の経営者によく言われるのは、相談するハードルが下がったということです。顧問契約していない弁護士に、いきなり電話やメールで予約を取って相談するのは勇気が要るものです。顧問弁護士であれば、こんなことを相談してもよいのかなと思うことでも、顧問料も支払っていることだし、とりあえず聞いてみようと思える気軽さがあります。
顧問先と何回もやり取りをしていくうちに、お互いの思考パターンや、問題が起きやすい部分、事業内容などをより深く理解できるようになります。そうすると、何か問題が起きたときも、背景情報の予想がつくので、回答が早くなります。また、オフィスなどに伺っていることがこういうときに活きてきます。付き合いが長くなればなるほど、私との顧問契約を結ぶメリットがより明確になってきます。
また、顧問先からは、法律問題だけでなく、経営全般の相談を受けることもあります。例えば、新規事業の立ち上げや売上の見込みについての相談などです。そのようなご相談を受けたとき、(法的なリスクは別途検討したうえで)私は様々な質問をし、経営者の方に考えてもらいます。このようなことを繰り返しているうちに経営者の方の中で考えが整理され、まとまってくることもあるようです。「相談する前は頭の中がぐちゃぐちゃになっていたけど、五十嵐さんと話していたら整理されてスッキリした」というようなことをよく言ってもらえます。法律相談に限らず、色々な形で顧問契約を活用してもらえればと思います。
初回相談の流れを教えてください。
まずは電話又はメールで相談の予約をしていただきます。初回から電話やメール、ウェブ会議でのご相談を受け付けている弁護士も多いようですが、私はお互いの信頼関係を大切にしておりますので、信頼関係が出来るまでは対面で直接お話しをすることにしております。申し訳ございませんが、電話やメール、ウェブ会議ではなく、直接事務所にお越しいただいております。お話を伺って、双方が納得すれば、契約を結び、案件を進めることになります。
企業法務について弁護士への相談を検討している方へのメッセージをお願いします。
企業をサポートすることで、事業の成長に貢献したいと考えています。また、様々な案件を経験することで私自身も成長し、より一層のサポートができるよう努めます。
共に成長し、大きくなっていきましょう。