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英明法律事務所

大手銀行での勤務を経て弁護士へ。一貫して人事労務案件に注力し、経営者の心と信念に寄り添う

東京都渋谷区で「英明法律事務所」を経営する浦辺英明弁護士(第一東京弁護士会所属)に、企業法務案件を手掛ける上での心構えや事務所の強みを聞きました。大手銀行で法人営業の経験に携わった経験があり、弁護士としても使用者側の人事労務案件に注力する浦辺弁護士。様々な業種・規模の会社の顧問弁護士を務め、人事労務関係の書籍も複数執筆しています。人事労務案件の特徴や顧問弁護士をつけるメリットなども聞きました。

大手銀行での勤務を経て弁護士へ。一貫して人事労務案件に注力し、経営者の心と信念に寄り添う
浦辺 英明弁護士
英明法律事務所

インタビュー

銀行員から弁護士に転身。経営者の思いに寄り添い、会社をサポート

これまでのキャリアについて教えてください。

大学卒業後は東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に就職しました。2011年に弁護士になり、2016年からは都内の法律事務所でパートナー弁護士を経験し、2020年に当事務所を設立しました。

銀行勤務を経て弁護士になるという方は珍しいですね。なぜ弁護士を目指されたのですか?

銀行員時代はオーナー企業に対する提案営業を担当していました。私は当時20代前半ながら、多くの経営者と直接お話する機会に恵まれました。どの経営者も魅力的で、自ら会社を作り、会社を発展させ、社員とその家族の生活を懸命に守る姿を間近で見て、心からリスペクトしていました。

他方で私は大きな組織の一員に過ぎませんから、組織の方針や決定に従わざるを得ず、目の前で困っている経営者の力になれない無力感、挫折感を味わいました。そういった経験から、弁護士になり、自らの信念に沿って法律面から経営者をサポートしたいと思ったことが大きな理由です。

銀行に勤務したのは約3年間という、そう長くない期間でしたが、今こうして人事労務を主に取り扱っているのは、そこで出会った経営者の方々のおかげですし、その経験が弁護士業務にも確実に活きています。

どのような会社の顧問弁護士を務めていらっしゃいますか?

私自身が担当している顧問先は、地域でいいますと北は北陸地方から南は沖縄まで幅広く、約50社となります。業種も幅広く、会社の規模も様々で、社員数名の会社もあれば500名以上社員がいる会社もあります。会社の他、医療機関やクリニック等からも顧問契約を頂戴しています。

顧問先は主にオーナー社長(理事長)による経営の中小企業が多く、私自身の若さ(2024年時点で44歳)を活かして、次代まで末永くサポートさせていただくことを念頭に置いています。

顧問業務だけでなく、ご紹介や弁護士ドットコムを通じて、単発でのご相談やご依頼も数多くいただいています。

どういった相談や依頼が多いでしょうか?

会社側に立った解雇事件対応と未払残業代請求対応が最も多い印象です。それ以外にも、心身の不調から長期間休職している社員の処遇、社内で発生したセクハラ・パワハラ、団体交渉対応、就業規則の改訂なども多いです。人事労務問題はほぼ網羅的に取り扱っています。

また、債権回収や契約書作成やレビューといった人事労務以外の企業法務も相当数あります。

契約書作成やレビューにつきましては、リーガルフォースを導入したことで、AIによるレビューと弁護士による人的レビューの双方を駆使することが可能となり、成果物のクォリティーが格段に向上しました。

真の「クライアントファースト」を目指して

事務所の理念を教えてください。

「Client First(クライアントファースト)」ということを理念にしています。クライアントファースト、つまり依頼者第一ということ自体は、多くの弁護士が掲げています。しかし私が意味するクライアントファーストは、「どの法的解決が依頼者にとって一番良いか」ということではありません。

法律だけでなく、「全方位的に考え、総合的にみてクライアントに最もメリットがあり、かつ幸福感のあるものを目指す」ということを意味しています。

具体的には、どういったイメージでしょうか?

たとえばある社長から、問題社員を解雇したいという相談があったとします。法律の話だけで言えば、今解雇した場合、その解雇が有効だと認められるかどうかを考えます。しかし、他に良策がないか、法的な解決方法以外の方法を考えるのです。

例えば、その問題社員が尊敬してやまない先輩社員がいるとします。その先輩社員が問題社員と飲みに行って、上手に話をすることで、問題社員は自主的に転職の道を選ぶかもしれません。

この方法がうまくいけば、会社は解雇という法的リスクを一切負うことなく、問題社員も会社から解雇のレッテルを貼られることなく、自らの意思で新天地へ挑戦でき、関係者全員が納得できる結果になります。

このように、法律という枠にとらわれず、より広い視点でクライアントにとって最も良い方法を考え、アドバイスするようにしています。もちろん法的に解決するのがベストというケースでは、法的観点から依頼者にとって最も良い結果を目指します。

柔軟な解決策を提示されているのですね。そのほかに、企業法務に取り組む上で心掛けていることはありますか?

私は常に、「法律上のリスク」と「事実上のリスク」の両面を考えるようにしています。

法律上のリスクというのは、問題社員を解雇したいという例で言えば、法律的に考えて有効かどうかという視点です。事実上のリスクというのは、実際にその社員が争ってくる可能性がどれくらいあるかという視点です。

仮に法律的なリスクが高い場合、つまり解雇が無効になるリスクが否定できない場合でも、実際に争ってくる可能性が低いと考えれば、解雇に踏み切る社長の決断にGOサインを出すこともあります。

他方、法律的なリスクは低くても、つまり解雇無効となるリスクは比較的低い場合でも、間違いなく訴訟や労働審判で争ってくると予想される場合は、それに対応する時間・労力・費用自体が損失と言えますので、解雇には慎重にならざるを得ないことがあります。このリスクの見極めは非常に大切です。

法律上のリスクは、法律・裁判例・過去の経験などを総動員して見極めます。事実上のリスクは、問題社員の年齢・家族構成・性格・資産状況といった具体的な事情を踏まえて見極めます。このスキルは、使用者側の労働事件を長年経験して培われた面もあると考えています。

人事労務案件特有の問題はありますか?

「横への波及」には気をつけています。たとえば離婚や交通事故など個人からの依頼であれば、その案件をどう解決したかということは、基本的にその案件限りの話です。

ところが人事労務の場合は、そうではありません。

たとえばある社員から、未払い残業代として100万円の請求があったとします。社長としては、100万円支払って済む話なら、さっさと支払って本業に集中したいという場合もあるでしょう。しかしそこで安易に応じてしまうと、別の社員が次々と未払い残業代を請求してくることが予想されます。

もちろん法的に支払うべきものは最終的に支払う必要がありますが、安易に支払ってしまうことで、他の従業員へ波及して大変な問題になることもあります。

ですから、一見、相手の要求にすぐに応じる方が経済合理性があるような案件でも、横への波及を考えてしっかり闘うことを勧める場合も少なくありません。

なるほど。まさに実務経験を積み重ねられた先生ならではの視点だと感じました。経営者の方と接するにあたって、心掛けていることはありますか?

社長の思いを無下にしない、ということは心掛けています。私が知る限り、社員のことを大切にしていない社長はいません。特に中小企業の場合は、社員一人一人の重みが強く、社長は社員を一生懸命採用し、育てて、守ろうとしています。ですから、頭ごなしに法律論をぶつけるようなことは決してせず、社長の思いに寄り添ってサポートするようことを心掛けています。

また、経営者は頭の回転が早く、行動力も胆力もあって、人間的魅力に溢れた方が本当に多いです。私も弁護士である以前に、経営者にとって信頼するに値する人間であれるように、書籍や芸術に触れたりして人間力を磨くようにしています。

弁護士であると同時に、一人の人間としてしっかり信頼関係を築こうとされているのが伝わってきます。それは、銀行員時代の経験が影響していますか?

そうですね。実は銀行員として入社し、営業を始めた当初は「最終的には商品力とプレゼンの勝負なのかな」と思っていましたが、蓋をあけたらまったく異なる世界でした。

極端にいうと、その商品の良し悪し自体は正確には判断がつかなくても「浦辺さんが勧めるのであれば、きっと良いものなのでしょう」と言って提案に応じてくださるケースが大変多くありました。

弁護士も同じで、時には社長の判断に対してNoを言わなければなりません。その時に、「あなたが言うなら」と納得してもらえるかどうかは、やはり信頼関係があるかどうかが大きく影響すると思います。

英明法律事務所_事務所内

経験こそ、弁護士としての適切な判断・アドバイスに不可欠

事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどのようなところでしょうか?

弁護士になって12年間、使用者側の人事労務に注力してきました。そこで得られた知識と経験は強みだと思います。

たとえば交通事故の分野では、すでに起きてしまった事故に対して、誰にどれくらい責任があるか、ということを争っていきます。

他方、人事労務の分野では、すでに起きてしまった問題への対処だけではなく、これから問題社員を解雇したいといったように、リアルタイムで対応を考えるケースも多いです。そこで弁護士が判断を誤ってしまうとトラブルになり、裁判や労働審判で不利な闘いを強いられる可能性があります。

しかし、弁護士が適切な判断やアドバイスをすれば、裁判や労働審判になっても有利に闘うことができます。

適切な判断やアドバイスをするには、どういったことが必要なのでしょうか?

一番大事だと思うのは、弁護士としてどれだけ人事労務案件に携わってきたかという経験の蓄積です。

もちろん一般的なことは文献を見ればわかります。しかし、世の中に全く同じ案件はありません。文献はあくまでも参考にすぎず、目の前の案件に対して適切な判断・アドバイスをするには、経験が物を言うと思います。

その点私の場合は、これまで多くの人事労務案件に携わり、過去の記録も事務所に保管されておりデータベースとして参照できますし、当然私の頭の中にも膨大な知識・経験の集積があります。

ちょっとしたことでも弁護士に相談できることは非常に重要

問題が起きたとき、弁護士に頼らず会社が自分で判断するリスクは何でしょうか。

経営者は、もちろんご自身の事業に関してはプロです。しかし、法律のプロではありません。経営者が「大丈夫だろう」と思っていても、法律の世界では認められない、ということはよくあります。

特に日本の法律は労働者保護が手厚いので、経営者が思っている以上に解雇や減給のハードルは高いです。ですから会社が自分で判断すると、誤った対応をしてしまい、後日大きな問題になるというリスクがあります。

早めに相談するメリットと、相談が遅れることによるデメリットを教えてください。

よく言われることですが、とにかく早ければ早いほど良いです。

「これから解雇しようと思っている」という段階でご相談いただくのと、「もう解雇してしまって、労働審判を申し立てられてしまった」という段階でご相談いただくのとでは、打てる手数に雲泥の差があります。

そして、すでに問題が大きくなってしまった後だと、解決に要する時間・労力・費用も当然多くなってしまいます。

また、早くご相談いただくことで、将来裁判や労働審判になった場合に備えて証拠を揃えるなど、有利に闘える状況を作れる可能性も高まります。

顧問弁護士を持つことのメリットは何でしょうか。

ちょっと気になることや違和感があるときに、すぐ弁護士に質問できることが大きなメリットです。顧問先には、私の携帯番号やLINEも教えていて、いつ連絡していただいても構いませんとお伝えしています。

「大丈夫だと思うけど念のため確認したくて」という感じで連絡をいただいたところ、実際は全く大丈夫ではない、ということもよくあります。顧問弁護士がいなければ、会社が自分で判断してしまうことも増えるはずです。その結果、先ほどお話ししたとおり、判断を誤って大きな問題になりかねません。

また顧問弁護士は、その会社の事業内容・方針・意思決定の流れ・キーパーソンなどもわかっているので、非常に話が早いというのもメリットです。

顧問弁護士を付けると、毎月顧問料はかかります。ただ、顧問料を渋ったばかりに大きな問題になってしまえば、結局、解決のために弁護士費用などがかかります。

顧問弁護士を付けておけば、そういった問題を未然に防げることも多いですし、問題になった場合でも有利な解決を導ける可能性が高いです。

会社に法務部を作ろうと思えば、法務部員1人あたり月数十万円はコストがかかります。しかも弁護士でなければ、法律の専門知識もありません。その点、顧問弁護士を付ければ、随分と費用を抑えられる上に、法律のプロに相談・依頼することができます。

法務部を作る余裕はないけれど法的リスクへの備えをしたいという場合に、顧問弁護士を付けるのは非常に良い方法だと思っています。

困ったことがあって相談したい場合は、どうすれば良いでしょうか?

お気軽にご連絡ください。ご相談いただきやすいよう、初回30分は無料で、zoomでの相談にも対応しています。また、初回相談の場合は、土日祝も対応可能です。

最後に、弁護士への相談を検討している方に向けてメッセージをお願いします。

やはり私のライフワークは人事労務であり、これからも多くの経営者・会社をサポートさせていただきたいと思っています。「こんなこと相談して良いのかな」「相談するほどではないかも」と思わず、ぜひ一度ご相談ください。