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インタビュー
問題の本質を理解するところから始める
事務所設立の経緯を教えてください。
1982年に弁護士資格を取得し、大手法律事務所に4年間勤務しました。その後、大学の先輩に誘われ古田・羽鳥法律事務所に参加し、1991年の9月に独立して羽鳥法律事務所を開設しました。
事務所を設立する際、所在地として本郷3丁目を選んだのは、私が文京区の出身であり、地理的な便益があるからです。この地の利を活かして、法人個人問わず、弁護士活動に取り組んできました。
事務所のポリシーや理念を教えてください。
依頼者のために全力を尽くすのは当然のことですが、依頼者の要求に応えることが、必ずしも最善の解決ではないと認識しています。その理由は、依頼者自身が問題の本質を理解していないことがあるからです。
依頼者から提供される情報や資料は、事件を理解するための一部にしかすぎません。依頼者の話をよく聞いて、法律の専門家としての視点で事件を把握する必要があります。そこには、依頼者自身が見落としていた事実や、問題の核となるものがあるかもしれません。それらを把握した上で、依頼者と一緒に解決策を検討し、適切な対応をしていくことをモットーとしています。
最も重要なのは企業の体質を深く理解すること
企業法務に注力している理由を教えて下さい。
自分の意思というよりも、自然な流れで企業法務に注力することになりました。以前所属していた事務所で、損害保険会社や証券会社の案件に携わり、業務を通じて企業との関わりが増える中で、顧問先も増えていきました。
独立後、離婚や相続などの個人案件を扱うこともありましたが、その多くは顧問先企業の経営者や関係者からの相談で、業務の中心は企業案件でした。
企業法務を手がける上で心がけていることや意識していることはありますか。
企業案件において、最も重要なのは企業の体質を深く理解することです。その企業に合ったアドバイスを提供するためには、企業の特長や業界の雰囲気、事業の特性などを詳しく把握する必要があります。
スポットで仕事をしたからといって、その企業の仕事をしたことにはならないと考えています。継続的な関係の中で、企業の状況や抱える課題を詳しく理解し、サポートすることが、企業法務の本質だと考えています。
また、企業ごとに顧問契約のメリットや必要性は異なります。企業の状況やニーズに合わせて、顧問契約の利点を明確に説明し、必要とされる価値を提供することを心がけています。
手紙は信頼を回復するコミュニケーションツール
印象に残っている案件はありますか。印象に残っている理由もお聞かせ下さい。
「スクールロイヤー」として、学校関連の問題にも対応しているのですが、あるとき学校から「問題を抱える生徒の父親を学校に呼んでも来てくれない」という相談を受けたんです。
この問題に対して、手紙を書くことを提案しました。しかし、驚くことに、学校の幹部教員たちは手紙を書くことに慣れておらず、手紙を書くことが難しいと言うのです。
手紙は形に残り、内容が不適切だった場合にあとから問題になる可能性があります。そのため、手紙を書くことはリスクがある行為と考え、避けてきたのでしょう。私は普段から手紙を書くことが多いため、この事実にたいへん驚きました。
現代では、電話やメールなど様々な連絡手段があり、手紙の必要性は減少しているのかもしれません。しかし、手紙は直接の対話よりも情報を整理しやすく、細かい配慮が加えられるため、感情的な問題や重要な事項に対して効果的です。
企業においても、顧客からのクレーム対応、社内の稟議書など、様々なケースで手紙が効果を発揮します。そうしたことを専門家としてもっとアドバイスしていきたいと感じた案件でした。
手紙を書くときは、どのような点に注意して書くのですか。テクニックなどはあるのでしょうか。
手紙を書く前に、問題の本質を深く理解することが大切です。関係者から話を聞き、解決につながる重要ポイントをしっかり把握します。事案ごとにポイントは異なりますし、ポイントが1つとは限りません。文章のテクニックを追い求めるよりも、問題の本質を掴むことにエネルギーを注ぐことが重要です。それから、意外に有用なのが正確な敬語の使用です。
手紙は、誠実さと責任感を伝え、問題を解決し、信頼を回復するための重要なコミュニケーションツールです。手紙が希少な存在となった時代だからこそ、より効果があるのではないかと思います。
企業法務における先生の強みを教えてください。
上場企業、非上場企業問わず、多くの企業案件に携わってきました。契約書チェックや取引先とのトラブル解消、悪質なクレーマーや反社会的勢力による不当な要求から企業を守った経験もあります。
企業法務の幅広い業務に対応するには、法律の知識だけでなく、実務経験を通じて培った戦術的な視点も必要です。30年以上企業法務に関わり、幅広い知識と経験を蓄積していることが強みだと言えます。
最後に、企業法務の問題で悩んでいる方に対するメッセージをお願いします。
弁護士は一般的な会社員や経営者とは異なる存在かもしれません。しかし、その異質さに新しい視点やアプローチを提供する可能性が秘められているといえます。
異なるバックグラウンドや専門知識を持つ弁護士を近くに置くことで、新たなアイデアや解決策が生まれることもあるでしょう。弁護士が持つ知識と経験が、企業にシナジー効果を生みだすこともあります。
企業法務や経営の問題に直面した際には、弁護士の意見を取り入れることを検討してみてください。新たな可能性を探ってみることは、企業の発展にとって有益な一歩になると思います。