
インタビュー
世の中の変化を常にキャッチし、的確なアドバイスを提供
事務所の理念を教えてください。
最新の社会の動きに敏感になって、これにキャッチアップすることにより、依頼者の最新のニーズに柔軟に対応していくことです。
世の中のトレンドや社会の状況、市民の感覚はものすごい速さで変わっています。トラブルの内容も同じです。当事務所では詐欺被害の相談にも対応していますが、例えば投資詐欺でいうと、少し前は架空の暗号資産の発行や上場話で資金を騙し取る手口が目立ちました。最近はトレンドが変わり、高級腕時計の偽物を販売して代金を騙し取るというような、「モノ」を使った詐欺が増えています。現在のAIテクノロジーがビジネス誌でも頻繁に取り上げられ、社会的関心が高まっている状況では、これからはAIテクノロジーに関する商材や投資の詐欺が増えてくると予想もできます。
ビジネスの世界においても、新たな技術やビジネスモデルが次々と生まれています。新規ビジネスのリーガルチェックの依頼を受けることも多く、的確なアドバイスをするためには最新の法規制や裁判例の理解が不可欠です。各業界の最新動向をキャッチするために、SNSや書籍をチェックしたり、経営者の方々と直接お話ししたりして、できるだけ多くの情報をインプットするように心がけています。上記の通り、AIテクノロジーへの関心が高まっている現状にかんがみ、AIテクノロジーに関してはエンジニアの方などとの交流を通じて、実機の稼働やよくあるトラブルに関し、情報収集をしております。
事務所にこもって仕事をしているだけでは得られる情報が限られます。人に会うこと、現場に足を運ぶことを厭わず、常にアンテナを立てて情報収集をしています。
企業法務に関してどのような相談を受けていますか。
中小企業で生じうる相談は何でも受け付けています。契約書や社内規則の作成・リーガルチェックをはじめ、ハラスメントや残業代請求をめぐる従業員とのトラブル、売掛金の回収、新規ビジネスの法的リスクに関する相談など、多岐にわたります。時には、経営者自身の離婚や相続の案件を依頼されることもあります。
特に相談が多いのは中小企業の監督官庁対策です。例えば特定商取引法に則ってクーリング・オフの文言を明記しているか、契約時の書面交付をきちんと行っているかなどの確認です。消費者庁や金融庁から指摘を受けないようにチェックします。
また、以前、芸能人の不貞に関する案件を受けたことをきっかけに、芸能・エンタメ系の企業からも多くの依頼を受けるようになりました。不祥事対応、マスコミ対応、契約書の整備、事務所の退所をめぐるトラブルやストーカー対策、ネットへの書き込みに対する損害賠償請求などに対応しています。
企業の規模でいうと、スタートアップよりもう少し拡大した段階の企業からの依頼を受けることが多いです。これまでは勢いで経営してきたけれど、今後は契約書をきちんと整えてリスクに備えたいと相談に来られて、顧問契約を結んでいただくことがよくあります。ただ、本当はスタートアップ段階から契約書をきちんと整えて、問題を未然に防ぐことは大事なので、資金的な問題もあると思いますがその段階から弁護士を入れておいた方が理想ではあります。
依頼者と相手側双方の思考を読み、的確な判断を下す
企業法務案件を手がける上で心がけていることを教えてください。
依頼者の思考を理解することです。なぜ私のもとに相談に来てくれたのか、今抱えている問題についてどのような解決を望んでいるのか、相手方に対してどうしてほしいと考えているのか、依頼者の現時点での考えを聞き、正確に把握します。また、私に対して包み隠さず情報を開示しているか、隠していたり漏れていたりする情報はないか、という点も意識しながら話を聞きます。
案件を表面的にとらえても適切な助言や対応ができません。問題解決のために適切な方針を立てるためには、依頼者にとって有利なことも不利なことも含めて、できるだけ多くの情報を聞き取ることが肝心です。その上で、問題を解決するために最善の手段を提案し、相手方と交渉する場合にどのような主張を展開していくか、といった見通しを説明します。
思考に注目するのは、相手方に対しても同様です。相手方の主張の裏にはどのような意図があるのか、なぜ、こちらが違和感を覚えるような行動をするのかという点に疑問を持つようにして背景に何があるのかを考える必要があります。。依頼者との関係性やトラブル発生までの経緯などから関係者の思考を汲み、その上でこちらの出方を検討します。
経営者の「大丈夫」という感覚こそ危険。時には軌道修正を促すことも
初回の相談ではどのように対応しているのでしょうか。
まずは相談内容、そして企業として今後取り組みたいと考えていることを聞きます。ビジョンを実現する上で足枷となっている課題や問題点を整理し、それらを解決するための方法をアドバイスします。
相談に関連する各種契約書は初回相談の段階で全て提出してもらい、細部まで確認します。というのも、「契約書は正しい形式で作っていますか?」と経営者に聞くと、多くの方は「雛形通りに作っているので大丈夫です」とおっしゃいます。しかし、実際にチェックすると不十分な箇所が多々あり、「このまま契約を交わしていたら危なかった…」とヒヤヒヤするような内容になっていることもあるためです。
インターネット上の雛形をそのまま使う企業は多いのですが、締結しようとしている取引内容にとって必要な条項が全て盛り込まれているとは限りません。実現が難しい条項や、自社にとって不利になる条項が記載されていることもあり、その場合、締結後に予想外のトラブルが起こる可能性があります。無用なトラブルを避けるために、契約書の内容に問題がないかどうか必ずチェックし、場合によっては修正するようアドバイスすることもあります。
また、トラブル発生時に、経営者の希望も丁寧にかみ砕く必要があります。例えば、「和解したい」という話をされると、弁護士だと双方金銭的に譲歩して進める方向性だなと考えがちですが、実は「(金銭的な)支払いをせずに和解したい」と考えているという事実上完全勝訴を求めているケースも多々あります。そうすると、方針やリスクの説明も大きく異なります。このように、弁護士と経営者の認知の違いからくる意思疎通の齟齬がないようにすることは非常に重要です。
顧問弁護士を持つメリットを教えてください。
企業活動をする上でトラブルはつきものですが、顧問弁護士がいれば、ちょっとした疑問や不安が生じた時点ですぐに相談し、トラブル発生を未然に防ぐための対策を講じることができます。顧問弁護士はその企業と継続的な関係を築くので、ビジネスの内容や経営状況、取引相手などの情報を把握しています。企業の実情に合ったアドバイスを受けられる点も、顧問弁護士を持つメリットです。
企業法務に取り組む意義を最も感じるのが、こちらの読みが当たってトラブルを未然に防げたときです。経営者の方は法律の専門家ではないので、契約書の内容や社内のルールなどに法的リスクがあったとしてもなかなか気づけません。だからこそ、弁護士の知識と経験が活きるのです。経営者と話す中でトラブルの種になりうる要素を見つけたら、すかさず「契約締結する前に、この点は必ず確認してください」「念のためにこの条項も盛り込んでおきましょう」などとアドバイスし、先手を打ってトラブル発生を回避します。
結果的に何も問題なくことが進み、顧問先が順調に経営を続けている様子を見ると、自分が顧問として関わることの意義を感じます。
また、費用面でも契約書のチェックが年間3件以上あるような場合には、顧問をつけてしまった方がいいですし、一回でもトラブルが生じてしまうようならば顧問契約をしていたほうが費用面で特になります。契約書のチェックについてはスポットだと20万程度かかるので、顧問契約の方がリーズナブルですし、債権回収などのトラブルの対応だと事案によりますが1件100万円程度の費用がかかるのが安く済んだり顧問内の作業だけで解決したりすることもあるため結論顧問の方が安く上がります。
企業法務について弁護士への相談・依頼を検討されている方へメッセージをお願いします。
企業間のやり取りはドライでシビアな部分があり、経営者の「大丈夫」という感覚は、時に非常に危険です。本当に大丈夫かどうかを入念に確認し、リスクがある場合は軌道修正を促すことが弁護士の役割だと考えています。
弁護士に相談料や顧問料を支払うのは勿体ないと思う方もいるかもしれません。ですが、相談をせずに独自の判断で推し進めてトラブルが発生した場合、リカバリーのためにどのくらいのコストがかかるか想像してみてください。弁護士の顧問料が月5万円だとすると、年間のコストは60万円です。月に数万円の投資でトラブルを回避できると考えれば、弁護士のサポートを受けることは決して損ではないと思います。
また、契約書のチェックや作成もスポットでも数万円で済むと考えている経営者が多いですが、実際には1件当たり20万円程度かかることが多いです。特に急ぎの場合だと、費用がさらに上がります。なので、顧問の範囲で処理したほうが結論、安いし早いです。
企業をトラブルから守り、順調な発展を支えるための力になります。ぜひ、お気軽にご相談ください。