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弁護士法人進取法律事務所

MBAを取得し、経営者の「ブレーン」として解決策探る 地元の中小企業の法務支援に注力

大阪府大阪市で「弁護士法人進取法律事務所」を経営する小林寛治弁護士(大阪弁護士会所属)に、企業法務に携わる上で心がけていることなどを聞きました。経営者の孤独な思いに寄り添い、一緒に解決策を探る姿勢が大切だと語る小林弁護士。企業法務について弁護士に相談・依頼するメリットについても詳しく聞きました。

MBAを取得し、経営者の「ブレーン」として解決策探る 地元の中小企業の法務支援に注力
小林 寛治弁護士
弁護士法人進取法律事務所
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  • 平日可

インタビュー

大阪の天満に根ざし、弁護士が少ない地域にも支店を展開

事務所設立の経緯と、企業法務に注力する理由を教えてください。

実家は大阪の天満で自転車店を営んでおり、子どもの頃から中小企業が抱えるさまざまな悩みを身近に見てきました。こうした環境で育ったことから、企業を支える仕事がしたいと思うようになりました。

また、地元に貢献したいという思いがあり、いつか地元で自分の事務所を立ち上げることを目標にしていました。

まず、他の法律事務所で勤務弁護士として経験を積んだあと、弁護士登録から3年半後に独立して事務所を設立しました。

事務所の理念や、大切にしていることを教えてください。

事務所名にも掲げている「進取の気性」という言葉を理念にしています。新しいことや、これまで弁護士業界であまり行われてこなかったようなことにも積極的に取り組み、自ら進んで行動する姿勢が「進取の気性」だと思っています。

具体的には、1つの事務所に弁護士を集めて規模を大きくするのではなく、弁護士が少ない地域に支店を展開することを目指しています。

大阪は特に西天満に弁護士が集中しており、北区や中央区、天王寺区あたりにも多くの弁護士がいます。しかし、それ以外の地域では、大阪市内であっても弁護士の数が不足していますし、郊外は都市の規模に比べて弁護士がほとんどいません。

弁護士が多くない地域に事務所を設けることで、地域に貢献したいと考えています。現在は、高石市に羽衣事務所、枚方市に枚方事務所を出しており、それ以外の地域にも支店展開を計画しています。

進取法律事務所_集合写真

MBAを取得したことで、アドバイスの質が向上

依頼者の満足度を高めるために取り組んでいることを教えてください。

依頼者への説明には、特に力を入れています。経営者の孤独な気持ちに寄り添い、共に解決策を探る姿勢を大切にしています。経営者の「ブレーン」として、アイデアを提供しながら優先順位を明確にし、依頼者が望む結果に近づけるよう努めています。

また、当事務所はセカンドオピニオンにも対応しており、他の事務所で断られた案件でも、新たなアイデアを提案しています。「この事務所が無理と言うなら、それは本当に難しいのだろう」と思ってもらえるような事務所を目指しています。

この柔軟な対応やアイデアの豊富さこそ、当事務所の強みであり、「進取の気性」という理念とも一致しています。

弁護士資格だけでなく、MBAも取得されたとのことですが、その理由や仕事に役立っている点を教えてください。

弁護士として中小企業法務に携わる中で、経営を体系的に学ぶ必要性を感じ、仕事をしながら大学院でMBAを取得しました。単なる断片的な勉強ではなく、筋の通ったビジネス知識と実務を体系的に学べたことは大きな収穫でした。

MBAを取得したことで、自分の意識が大きく変わり、アドバイスの質も明らかに向上したと実感しています。弁護士としての知識をさらに広げ大きな力になっているので、取得して本当によかったと感じています。

中小企業の法務支援の最前線で活動

大阪弁護士会が運営する「中小企業・NPO法人等支援センター」の事務局長を務めているそうですね。どのような活動をしていますか。

大阪弁護士会が運営する「中小企業・NPO法人等支援センター」の設立を提案し、事務局長として活動の中心を担ってきました。このセンターには大阪弁護士会(約5000名)の4分の1ほどの弁護士が登録し、中小企業向けの法律相談や講師派遣などを行っています。

また、大阪府下の中小企業支援組織や公的団体と積極的に連携し、相談会や講演会を開催するなど、外部との交流も行っています。私も現場に出向くことが多く、中小企業の法務支援の最前線で活動しているという自負があります。

どの業界からの相談が多いですか

地元の中小企業からの依頼が多く、業種は食品や薬品、バイオヘルスケアです。また、地元の製造業や建設業からの相談も多く、約30社の企業を顧問先としてサポートしています。

弁護士という「形のないもの」を扱う職業だからこそ、「ものづくり」の分野に特別なリスペクトを持っており、弁護士として関わっていきたいと思っています。

最近では、陸上養殖に興味を持っていますので、関心を持ってくださる企業がありましたら、ぜひお声がけいただけると嬉しいです。

進取法律事務所_会議室

会社の売上規模に応じて弁護士の活用を

よくある相談と、最近の相談の傾向を教えてください。

契約書のチェック、取引先や顧客とのトラブル、従業員とのトラブル、債権回収などがあります。

最近ではコロナ禍に行われた「ゼロゼロ融資」(売り上げが減少した企業に実質無利子・無担保で融資する制度)の元本返済が始まりましたが、多くの企業がV字回復を実現するのが難しい状況です。そのため、事業再生や倒産についての相談が増えていると感じます。

また、企業のコンプライアンスやガバナンスに対する意識が高まっていると感じます。

以前は契約書を交わさずに取引していた企業も、今では取引先から契約書の作成を求められるようになっています。契約書には責任分担や範囲に関する条項が巧妙に含まれていることがあり、内容をよく確認せずにサインするとトラブル発生時に不利な立場に陥る可能性があります。

また、自社で契約書を作成しているものの、他社から提供されたものやネットで見つけた契約書をそのまま使っているケースも多く、正確さに不安を感じて、自社用の契約書ひな形を整備してほしいという依頼も増えています。

企業法務について弁護士に相談するメリットは何ですか。

日常的に法律問題に対応できる体制を整えることが、自社を守るだけでなく、将来の成長戦略にも繋がります。

会社の売上規模に応じて、弁護士を活用することが大切です。私の考えとしては、売上が1億円を超えたら、月に5,000円程度を弁護士の相談料に充ててもよいかと思います。

売上が4億円を超えたら月2万円、6億円を超えたら月3万円、10億円を超えた場合は月5万円を支払って顧問弁護士を雇うことをお勧めします。

弁護士と顧問契約を結ぶメリットは何ですか。

日常的に困ったことがあった際に、電話一本で気軽に相談し、その場で迅速に回答を得られるのが顧問契約の魅力です。もちろん、詳細な打ち合わせが必要な場合は、日時を調整して打ち合わせを行うこともありますが、それに至らない程度のちょっとした質問を気軽にできることが顧問契約の大きなメリットです。

中小企業のM&Aにかかわる紛争案件にも関与

これまで携わった案件で印象に残っているものはありますか。

M&Aの売主である依頼者が、M&Aの買い手会社と仲介業者に対して起こした訴訟です。依頼者は歴史のある製造業の元代表で、M&Aの完了後に連帯保証の解除と対象会社から退職金などの支払いが約束されていました。

しかし、買い手企業は工場を売却して、事業を停止。約束していた支払いもおこなわれず、取引先や従業員への未払いも発生しました。

私は代理人として買い手企業を提訴し、一部の退職金などを回収できました。また仲介業者に対しても、善管注意義務違反で最高裁まで争いましたが、こちらは責任が認められませんでした。

M&Aの仲介業者は、資格不要で参入が自由なため、専門性や倫理観に欠ける業者が混在しています。また、売主と買主の両方から報酬を得られるため、成約報酬を狙って無理に成約を進めるケースもあります。だからこそ、前例がなくとも、弁護士が法的構成を工夫して責任を追及することが必要です。

この問題については、国も強く関心を持っており、最近、国が出している「中小M&Aガイドライン」が改訂されました。また、大阪弁護士会と「大阪府事業承継・引継ぎ支援センター」が共同作成した、悪意ある買い手への注意喚起のリーフレットにも携わりました。

依頼者からも感謝の言葉をいただき、いわば業界の注意喚起を促すきっかけとなった案件の一つとして印象に残っています。

企業法務について弁護士への相談を検討している方へのメッセージをお願いします。

弁護士は、気軽に活用していただきたいと思います。顧問弁護士でなくても、普段から相談できる弁護士を見つけておくことは大切です。名刺交換だけで終わらず、少しずつ関係を築くことを意識してみてください。

弁護士にはそれぞれ得意分野や相性があります。一度相談したからといって、その弁護士に依頼しなければならないわけではありません。複数の弁護士を比較し、自分に合った信頼できるブレーンを見つけることをお勧めします。

私の事務所は大阪の西天満に拠点を構えており、地域の活性化に貢献したいと思っています。中小企業も地域を盛り上げる大切なプレーヤーです。共に歩んでいける方々と手を取り合いながら、地域の発展に貢献していきたいと思っています。